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伯夷・叔齊 (はくい・しゅくせい)

時には餓死すれども、人として一歩前に進むことになる

 孔子様がお生まれになる五百~六百年前に伯夷・叔齊と言う聖人と称えられた兄弟がいた。 二人は権力者の悪を諫めて自ら飢え死にした。その真っ直ぐな生き様は、清廉なるが故であったのか愚かであった故だったのだろうか。
 伯夷が長男、叔齊は三男。伯夷は、父親から弟の叔齊に位を譲ることを伝えられ、叔齊に王位を継がせようとし、兄、伯夷は国を捨てた。叔齊も位につかずに兄を追った。 二人は周の文王の良い評判を聞き、周へ向かった。 二人が周に到着したときには既に文王は亡くなり、その子の武王が、呂尚(太公望)を軍師に建て、酒池肉林で知られた帝辛(殷の紂王)を滅ぼそうと軍を起こし、殷に向かう途中だった。 二人は道に飛び出し、馬を叩いて武王の馬車を止め、父、文王が亡くなって間もないのに戦をするのが孝なのか、 主君の紂王を討つのが仁なのかと諌めた。兵は二人を殺そうとしたが、呂尚は、義人、正しい人たちとした。
  紂王の殷は滅亡し、武王が新王朝の周を立てた。伯夷・叔齊は周の粟を食む事を恥として、周を離れ、首陽山に隠棲して山菜を食べていたが、最後は飢え死にした。

 子曰く、伯夷(はくい)・叔齊(しゅくせい)は、舊惡(きうあく)を念(おも)はず。怨(うらみ)、是を用って希(まれ)なり。(公冶長第五[23])

子曰く、伯夷、叔齊は、昔の悪い事、他の人の過ちを改めたらこれを許し、人から怨(うら)まれることはまれであった。

 「旧悪を念わず」とは、殷(いん)の王が亡くなってからは、その旧悪を気にせず、節を守ったことを指すという説もある。 「怨(うらみ)、是をもって希(まれ)なり」とは、人から怨(うらみ)まれるのが希(まれ)、旧悪を念わずの時点で、すでに怨(うらみ)は無い。罪を憎んで人を憎まず。潔白ゆえに狭量になりがちになるが、陥(おちい)ることはなかった。 つまり、その行為を憎むのであって、その人を憎むのではない。
 伯夷・叔齋は人の昔の悪行を憎むが、行ったその人は憎まない。だから人への怨(うらみ)は希(まれ)である。そうとも捉えられる。しかし、その悪を憎み、その人を憎まずは、怨(うらみ)、そのものを持たない。存在しない怨に希(まれ)ということはない。 ここは、単純に怨(うらみ)まれない人は優れているということだ。伯夷・叔齊は古の賢人なり。仁を求めて仁を得たりと孔子様は評している。 

参考文献

  • 小川環樹、今鷹真、福島義彦 訳『史記列伝』伯夷列伝 岩波文庫,1975
  • 諸橋轍次『論語の講義〔新装版〕』大修館書店, 1989
  • 土田健次郎 訳注『論語集注:朱熹』平凡社, 2013
  • 貝塚茂樹 訳『論語』中公文庫,1973
  • 宇野哲人 訳『論語新釈』講談社学術文庫,1980
  • 吉田賢抗 訳『論語』明治書院,1960
  • 吉川幸次郎 訳『論語』朝日新聞社,1996

 

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