帰りに運転しながら、運転している自分に気づきつづけていた。バックミラーとサイドミラーの像が同時にけっこう鮮明に見える。頭に気が上がっているように感じで、後頭部あたりの違和感を確かめていた。やっぱり疲れているんだよなぁ。
触覚に似た感じでモヤモヤと動いた。その感触を味わいながら、身体の感覚を確かめた。肩に力が入っていて、重力に逆らっている。ハンドルの影響を超えて、両肩が前につぼんでいる。右側の腰が少し張っている。右の坐骨に重心が移っていた。そうだわな、右を下げて覗き込む姿勢が圧倒的に多い。仕事帰りには重心が右に偏ってしまうのか? いや、もう普段からずっと右に偏っているか。
運転そのものは、どこにも偏りがない。自然にアクセルを踏んで、ハンドルに手に添えて、必要があればじっくりと止まるだけ。通勤路は、ほぼ、直線と直角だけで構成されているから、ズボラな運転ができる。途中の高速道路は、信号もないので、もっと気楽だ。いつもは、左車線を流すのだが、今日はすこし緊張したいので、右車線に入る。左がのんびり流れているので、さほど速くない右でもスピード感はある。少し窓を開けていると、不思議な共鳴音が聞こえてくる。音とも風とも言えないものが、共鳴、もしくはぶつかり合っている感じだ。この感じは、単調で規則性があるので、やばい感じがする。意識レベルに影響を与えそうなので、窓は閉じることにした。
高速道路の出口まで、しっかりと自分の身体感覚を意識していた。この意識している意識に気づくと、なんとも不思議な感じがしてくる。自分という座標軸の中心を失う感じが、断片的に起こる。居眠りしてしまっているのではない。意識は鮮明だ。
フォーカスできないというか、フォーカスすることが馴染まない感じがした。本来あるはずのものが見つけられない感じがした。
なんだろう、それ。